ご存知ですか?夏が旬の“貝の王様”アワビの生態と歴史

「磯の鰒(あわび)の片思い」と万葉人がいったように、アワビは二枚貝の片割れのように見えます。なかなか食べたくても食べられない高級食材アワビに、片思いをしている人も多いことと思います。今回は、そんなアワビの生態と歴史についてご紹介します。

アワビと日本人との関わりは古く、縄文時代の遺跡からも殻が出土し、邪馬台国の女王卑弥呼の食卓にも上がっていたと伝えられます。それ以降、祝い事の進物や朝廷への献上品にアワビは欠かせないものになりました。式年遷宮で注目を集めた伊勢神宮では、祭事に欠かせないものとして今でもアワビを尊んでいます。

「熨斗(のし)アワビ」誕生秘話がここに!

そのアワビですが、そのまま献上したのではありません。都に運ぶのに何日もかかるので、身を薄くはいで長く伸ばし日干しにして熨(の)しました。ここで「熨斗(のし)アワビ」が誕生したのです。長く伸ばすという意味合いから、朝廷の儀式や宴席には「延命延寿」の印として重宝されるようになりました。

高級贈答品が熨斗(のし)紙に?

このように献上品として尊ばれたアワビですが、「食材」としてのイメージが薄れるようになりました。かつては和紙に包んで献上された熨斗(のし)アワビですが、その礼儀作法だけは現代にも脈々と伝わり、「熨斗紙」として贈答品に欠かせないものになったのです。

朝廷に献上された熨斗アワビは中国へも輸出されました。当時から中華料理の高級食材だったようです。そのアワビですが、一般にアワビと称されるものにはクロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、エゾアワビの4種があります。漁獲量のほとんどはクロアワビとメガイアワビの2種類で占められています。

知られざるアワビの生態、高嶺の花のわけ

アワビとトコブシはどう違う?

現在アワビは全国的に減少傾向にあります。それを受けて全国各地で養殖事業なども進められています。

ところでアワビと似ているものにトコブシがありますが、見分け方をご存知でしょうか? アワビ類は外側に4個ほどの穴があいていますが、トコブシにはこの穴が7個前後あります。非常に原始的な見分け方ですが、トコブシの方が小ぶりです。

えっ、サザエと仲間って本当?

アワビの貝殻は二枚貝のように平たい形状をしていますが、実はサザエなどと同じ巻き貝の仲間になります。アワビの殻は二枚貝の一方が失われたものではなく、らせん形のものが平たくなったれっきとした巻き貝です。殻の口のところには「ふた」も存在しています。

アワビ漁獲量は、50年ほど前の最盛期には6千トンを超していましたが、近年減少し続けて、2千トン前後に低迷しています。アワビが減少した原因はいくつか挙げられますが、温暖化などによる海流や水温の変化、生息環境の悪化、漁獲量による資源減少も関係しているようです。

刺身にステーキは定番、水貝って?

アワビは貝類の中でももっとも味がよく歯ごたえもあり、おいしいですね。その分、価格もちょっとお高めで、庶民の口にはなかなか入らない食材です。晩秋から冬にかけて産卵するアワビは夏が旬で、刺身はもちろん酒蒸しやステーキなど食べ方もいろいろです。

大型のものが手に入った時は水貝にするのが良いでしょう。アワビを2cm角のさいの目切りにし、氷で冷やした塩水に氷とキュウリ、ウドなどを添えたものです。清涼感あふれる夏の料理です。えっ、薄くはいで軒に吊るす? 熨斗アワビも良いかもしれませんね。


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