
魚・貝のレシピ
古いが新しい「海の乾物」。知られざる栄養とおいしい食べ方
古来から日本の保存食として親しまれている「かんぶつ」には、2通りの表記があります。1つは「乾物(かんぶつ)」で、もう1つは、一般的に「ひもの」と呼ばれている「干物(かんぶつ)」です。それぞれの呼び方は、材料と製法によって呼び分けられています。
「乾物」は、海藻や野菜など、植物性の材料を乾燥させたものです。一方「干物」は、魚や貝などに塩をして干したもの。保存食として作られた「かんぶつ」ですが、乾燥させることで、うま味や栄養がギュッとつまった食材に生まれ変わります。今回は、海草類を中心とした「海の乾物」を紹介しましょう。
代表的な海の乾物たち
四方を豊かな海に囲まれた日本は、世界的にも珍しい「海藻」の食文化を育んできました。日本人は、和食のダシに欠かせない昆布をはじめ、わかめやひじき、のりなど、さまざまな海藻類を食べてきました。
近年の健康志向をうけて人気の日本食ですが、あらためて「海の乾物」のおいしさとヘルシーさが注目を集めています。海藻類には、豊富なミネラルやビタミン、食物繊維が含まれ、体の調子を整えるだけでなく、生活習慣病の予防にも効果があるといわれています。
うま味がつまった「おぼろ昆布」
和食のダシにも使われる昆布のおいしさは、うま味成分の1つであるグルタミン酸です。昆布には、多くの日本人に足りないといわれているカルシウムが、牛乳の約6倍(100gあたりの数値)も含まれています。「第6の栄養素」と呼ばれる食物繊維は、さつまいもの約8倍(100gあたりの数値)。昆布特有のネバネバは、水溶性食物繊維と呼ばれ、コレステロール値を抑制する効果あるといわれています。
酢に漬けた昆布を職人が包丁を使って1枚1枚削り上げた「おぼろ昆布」は、昆布のおいしさと栄養をまるごと味わえる加工食品です。
しんみりおいしい「おぼろ昆布汁」
お椀に入れたおぼろ昆布に、お湯を注ぎしょう油を垂らします。
ご飯が引き立つ「おにぎりにおぼろ昆布」
炊きたてのご飯で作ったおにぎりに、ふんわりおぼろ昆布を巻きます。
海の野菜「乾燥わかめ」
わかめは、みそ汁の具や酢のものなど、食卓になじみの深い食材です。わかめには、ヨウ素をはじめ、カリウムやカルシウム、亜鉛など、海洋ミネラルが豊富に含まれています。カリウムは、体内の余分な塩分を排出する作用があり、高血圧の予防が期待されます。ほかにも、ビタミンCやβカロテン、ナイアシンなど、ビタミン類も豊富です。
「乾燥わかめ」は、水で簡単に戻せる便利な食材です。「野菜系の副菜をもう一品」という時に重宝します。
栄養たっぷり「わかめスープ」
韓国では産後に食べる伝統食です。戻した乾燥わかめと牛肉をごま油で炒め、ダシ、すりおろしニンニク、しょう油、塩こしょうで調味します。
女性にうれしい栄養たっぷり「乾燥ひじき」
ひじきはアルカリ性食品の優等生。カルシウムは牛乳の約13倍(100gあたりの数値)、鉄分はレバーの約6倍(100gあたりの数値)、食物繊維はごぼうの約7倍(100gあたりの数値)など、女性に不足しがちな栄養素が豊富です。水で戻して使う「乾燥ひじき」や、使いやすい「ふりかけタイプのひじき」もあります。
栄養たっぷり「ひじきの混ぜご飯」
水で戻したひじきとニンジン、うす揚げをごま油で炒めてから、ダシとみりん、しょう油、砂糖、酒で汁気がなくなるまで煮て、温かいご飯と混ぜ合わせます。
海の乾物は、自然のサプリメント
乾物は応用の幅が広くて、和食に重宝します。忙しいとインスタントに走りがちですが、健康のことを考えると、やはり丁寧な調理がベストです。不足しがちなミネラルやビタミンは、できるだけ自然の食品から摂取したいですね。おいしくヘルシーな海の乾物を活用しましょう!
参考: